先日、怪獣ソフビのかんたんリペイントについて解説させてもらったが、ちょっと言葉足らずな部分もあったかと思ったので補足する。
たぶん、初心者にとって一番の悩みどころは、塗料問題なんじゃあなかろうか。自分の場合、そもそもプラモデル製作が趣味のひとつなので、これまでに買ってきた塗料を適当に組み合わせて使ってるんだが、一から買い揃えるなら何がいいのか教えちゃおう。
ラッカー系塗料とアクリル系塗料、どっちがいいのか。どこのメーカーのものがいいのか。もちろん、それぞれに長所と短所があるので一概には言えないが、個人的にはガイアカラーがオススメである。とにかく隠蔽力が強いのが嬉しい。たとえば、マガバッサーの腹部や腕には、ガイアカラーのオレンジイエローを使っている。成型色が濃いため、ちょっと下地の青が透けてしまうんじゃないかと不安もあったが、実際にはこのとおりだ。
ただ、どこにでも置いてある類の商品ではないため、Mr.カラーでも問題はない。自分自身、どちらの塗料のほうが稼働率が高いのかといえば、なんだかんだでMr.カラーだったりする。なんたって安いし、どこの店でも大量に揃えているところが強みだ。マガジャッパの金色部分は、Mr.カラーのゴールド（金）を筆塗りしたもの。白目も、同じくMr.カラーのつや消しホワイトだ。ちなみに筆は、獣毛を使った白いものよりもオレンジ色のナイロン製のもののほうが毛も抜けにくく、長持ちしやすい。平筆と面相筆が1本ずつあれば、大抵なんとかなるだろう。
なお、もっと全面的にリペイントする場合は、下地にラッカー系塗料を使い、その上から部分的にアクリル系塗料を使っていくのもアリだ。アクリル系塗料はラッカー系塗料を侵さないため、薄め液で拭き取っても下地は無事だから、失敗しても何度でも塗り直すことができるぞ。逆は無理なので、そこだけは注意して欲しい。ラッカー系塗料は、とにかく乾燥が早いからせっかちさんにお勧めしたい。
かんたんリペイントと謳いつつ、意外と作業工程が細かいじゃないかという向きもあるだろう。実際、マガバッサーやマガジャッパは部分塗装とはいえ、けっこう細かいところまで塗り直しているため、初心者には敷居が高く感じられるかもしれない。ただ、あまり描き足す必要のない怪獣もいっぱいいる。たとえば、こちらのマガグランドキングとマガパンドンは、Mr.ウェザリングカラーのマルチブラックで汚したのち、他の魔王獣と揃えるためにガンダムマーカーのガンダムレッドでちょちょっとマガクリスタルを塗ったぐらいなので、この手の簡単そうな怪獣から始めるのもいい。
そういえば、マガゼットンはウルフェス限定ソフビなのね。30年以上前の原型ということもあって、他の魔王獣と並べると少し造形的に見劣りしてしまう気がする。とはいえ、怪獣標本を全面リペイントするのも面倒くさそうだ。ここのところ、コンスタントにリペイントを楽しんでいるけれど、やっぱり部分塗装とウェザリングのみという手軽さがいいんだよね。最小限の手間で最大限の効果、それがかんたんリペイントなのだから。
えー、リペイントの話だけで終えてしまうのも味気ないので、ついでにウルフェスの思い出話でもするか。ウルフェスの第1回は1989年のことだが、子供の頃からほぼ毎年通っている。幼稚園、小学校の時分は親戚や友達の家族と、中学生になってからはマニア仲間と一緒に池袋サンシャインシティに繰り出した。昔はディズニーランドのように、大勢のウルトラ戦士が会場を練り歩いていたもんだが、当時から一番の楽しみは間近で見られる怪獣の着ぐるみ。テレビに登場するオリジナルとは似ても似つかない、アトラク用の怪獣たちがたまらなく愛おしかった。オリジナルはビデオで何度も見られるが、アトラク怪獣は二度と会うことができないかもしれない。まさしく一期一会の関係なのだ。
もちろん、ライブステージも気が抜けない。見慣れたウルトラ戦士よりも、他愛のないストーリーよりも、アトラク怪獣の一挙一投足のほうが大事だった。アイドルのライブやイベントにおいて、まったく動かずにただ見つめているファンのことを“地蔵”と呼ぶらしいが、子供の頃の自分はまさしくそれである。親からは、せっかく連れてきたのにつまらなそうな顔をして……と思われたかもしれない。だからウルフェスを訪れた大人の感想に、必死になってウルトラマンを応援する子供たちの姿に胸を打たれたというものがあるけれど、これっぽっちも共感ができないのだ。むしろ俺様ちゃんの心を揺さぶったのは、思わぬマイナー怪獣の登場に「メタモルガだ……！」と独り言ちたメガネの少年、キミだよ。大きくなったらMATに入れ、じゃなかった。ソフビを塗れ。歴史は繰り返す――。
