大怪獣まんだら

GIGAN YAMAZAKI & WAGAYA FACTORY's blog

怪談シリーズ 君も“EXAM案件”を投稿せよ!?

「生まれたときから老害」――日本オタク大賞シリーズにおけるガイガン山崎のキャッチフレーズだ。70年代ガキンチョカルチャーを愛する若手ライターという特殊な立ち位置の自分にとって、こういう分かりやすいキャラクター付けはありがたい。とりあえず狭量な物言いをすれば、それが笑いに繋がるので共演者もやりやすいだろうし、観客としても入っていきやすいのではなかろうか。最近の仮面ライダーは仲間割ればかりしていていかんねェってな具合である。
まあ、ロボットや怪獣怪人が暴れないと不機嫌になるのは、単純に性根が幼稚というだけで老害とは関係なく、むしろ実際のところはいーじゃんいーじゃんで大抵のものを受け入れてしまう節操のない男なのだ。そもそも『オタク大賞』というイベント自体、その年を象徴する最新作プレゼンするものだから、登壇者が老害だと何も始まらない。


もちろん、こんな趣味だから老害じみた振る舞いをしていた時期もあった。せっかく中学受験までして入った高校を中退して、大検を取り、日本大学芸術学部で映画や小説について学んでいた数年間だ。小学4年生で早くも中2病を発症していた早熟な少年は、ティーンエイジャーにして老害と化した。口を開けば、現行作品に対する偉そうなことばかりの生意気なガキだったように思う。
しかし、そんな老害少年も社会人として世に出る頃には穏やかな死を迎え(老化スピードが早いのだ)、現在知られるガイガン山崎に生まれ変わったのでした。メデタシメデタシ……といきたいところなんだが、先日とんでもないものを発掘してしまった。老害真っ盛りの時代に考えたオリジナル仮面ライダー、その名もEXAM(イグザム)である。



一応、萬画版やS.I.C.などからディテールを拾ってきたりもしているが、オリジナルとは名ばかりの新1号そのまんまなデザイン! ヒーローとして仮面ライダーは新1号で完成しているのだという若き主義主張がビンビン伝わってくる。『仮面ライダー555』や『仮面ライダー剣』の時代であるからして、とんでもない逆行ぶりだった。なお、仮面ライダー0号云々というのは、平山亨著『仮面ライダー 変身ヒーローの誕生』に載っていた『二人ライダー・秘話』からの引用だ。


ショッカーの援助を得た緑川博士は、仮面ライダーのプロトタイプを作り出すことに成功するが、やがてそれは体力の限界によって悲壮な最期を遂げてしまう。だが、この英雄的な青年の死に良心の叱責を受け、ショッカーへの疑念を抱き始めた彼は、第二の素材として愛弟子である本郷猛の名を挙げるのだった……。
『二人ライダー・秘話』には、こんな『仮面ライダー』第1話の前日譚にあたるバックストーリーが描かれており、もしもそのプロトタイプが仮死状態で生きていたら? しかもそれが緑川博士の息子だったとしたら? 『仮面ライダーEXAM』は、そんな発想からスタートしたものだったと記憶している。


大学の専攻が文芸だったこともあって、映像でもマンガでもなく小説で発表することにした。『超光戦士シャンゼリオン』公式サイトで配布されていたPDFを参考にエセ企画書をこしらえたり、主題歌や挿入歌を作詞したり、先回りして全話リストを製作したり、あんなに熱中して二次創作に励んだのは最初で最後かもしれない。また、『もっとすごい科学で守ります!』の影響を受けて、石森原作ヒーロー総登場というサブプロットもあった。最終的にマシンマンやバイクロッサーも戦列に加える予定だったようだが、どうするつもりだったんだろう? 今となっては確かめるすべがない。
そう、実は途中で自主制作映画のほうが面白くなってしまい、『仮面ライダーEXAM』は未完に終わったのだ。立花藤兵衛に育てられたEXAMに対して、谷源次郎の世話になっている仮面ライダー神衣(カムイ)という2号ライダーを考えていたものの、彼に活躍の機会が与えられることはなかった。ちなみに神衣は改造人間ではなく、バイクにも乗らない。人の話を聞かず、誰かれ構わず喧嘩を仕掛ける優男という平成ライダーを揶揄したようなキャラクターで、かつての自分が何と戦っていたのか甚だ疑問である。


今回、当時のメモ書きを読み返していて、つくづく感じられたのがスーパーロボット大戦シリーズや平成仮面ライダーシリーズに対する不満、そして「俺のほうがうまくやってみせるぜ!」という驕りだ。何か何まで人からの借り物で、何を考えとるんだという感じだが、それが若さというものなのか。
つらつらと書いていて気付いたけれど、EXAMのコンバーターラングに茶色いパーツが付いているのは、明らかにアナザーアギトのパクリである。なんだよ、平成ライダー大好きっ子じゃん! 老害を気取ったところで、所詮はティーンエイジャー。ガキンチョなのだ。本当はどちらのシリーズも、夢中になって楽しんでいたことは言うまでもない。


しかしだ。恥ずかしい恥ずかしいとなりつつも、ところどころ読みながら「おっ、ここはいいじゃん!」などと感心してしまう自分がいる。結局、自分が自分に向けて作った設定と物語である以上、今もなおどこか響くところがあったとしても不思議じゃないよね。
それに『EXAM』があったからこそ、小説だけでは飽き足らず映画を撮るようになり、映画を撮ったからこそ『宇宙船』にスカウトされ、こうして今もフリーライターとして飯を食えているわけです。そう考えると、やはり簡単に“黒歴史”と切り捨てられるようなものでもなかったりするのだ、『EXAM』は。


さて。去る8月26日開催の『防弾!地熱ナパーム倶楽部 Vol.6』では、齋藤航店長の陰謀によって『EXAM』話で盛り上がってしまい、次回はみんなの“EXAM案件”を持ち寄ろうじゃないかという話になった。いつもゲストで来てくれている高遠るいさんも山本賢治さんも床山皇帝も、やはりオリジナルのゲッターロボやらガンダムやらをこさえた恥ずかしい過去を持っていたのである。クリエイターを志す者ならば、どうも一度は“EXAM”に手を染めてしまうらしい。そこで是非、諸君の愛と驕りの産物も見せて欲しい! ゲストはもちろん、観客だって巻き込んでいくスタイルだ。
数日前、打ち合わせで学生時代のノートを見せ合ったんだが、プロの漫画家になる人間の習作といえど“EXAM”はキツい! 本人の趣味嗜好が、ほぼ加工されずにぶち込まれているのだから、こんなに恥ずかしいものもないだろう。ただ、いずれも現在の作風に通ずるところがあり、“EXAM”の延長線上に今の自分たちが存在することは否定できないのだ。改めて他人に見せるようなものではないが、これをなかったことにするのも忍びない。“EXAM案件”とは、そんな複雑な存在なのである。



余談だが、小説『仮面ライダーEXAM』は、ホームページサービスの終了に伴い、誰の目に触れることもないワールド・ワイド・ウェブの海底へと沈んでいった。HTMLの組み方が特殊だったためか、Internet Archiveで確認することもできない。正直、ホッとした。
では、『EXAM』は地球上から完全に消滅したのかというとそうではない。大学時代のゼミ誌に、ラブホテルを根城にする女怪人のエピソードを載せてしまったことがあるのだ。過剰な性描写も、多くの“EXAM案件”に共通する恥ずかしい特徴なんだが、この際どうでもいい。自主映画にばかりかまけて、課題の小説を書く時間がなかったとはいえ、あまりにも迂闊な判断だった。ゼミ誌というモノは、かなりの部数が刷られる。なんと今でも文化祭の時期が来ると、OG・OGの作った本として縦積みされるのである。嫌がらせか?
そこで自分は、後輩の陣中見舞いに訪れたふりをしつつ、カバンの中にゼミ誌をすべて叩き込み、自宅へ持ち帰って燃やしているのです。毎年、毎年、燃やしているのです。これはなかったことにしてもいい。忍びなくない。全然忍びなくない。メラメラメラ……。