大怪獣まんだら

GIGAN YAMAZAKI & WAGAYA FACTORY's blog

一日一超獣(ヤプール その1)


地球の馬鹿ども、ご機嫌よう。先月から地道に続けてきた「一日一超獣」も、残すところあと僅かとなった。そろそろ首魁たるヤプールの紹介をしてもいい頃合いだろう。『ウルトラマン超闘士激伝』でも屈指の人気を誇る「ヤプール編」におけるラスボスである。『ドラゴンボール』的に表現するならば、向かって左が第2形態、右が第3形態ということになるが、いずれも異次元超人 巨大ヤプールをモチーフとしていることは明白だ。


巨大ヤプールは、井口昭彦とともに数多くの傑作超獣を送り出した鈴木儀雄のデザイン。超獣といえば、無数のトゲトゲやブツブツ、得体の知れない穴空きパーツをぶら下げたデコラティブな姿を想像する向きも多いだろうが、そういった連中の大半は鈴木の手によるものだ。先日、御本人に円を取り入れたデザインを好む理由をうかがってみたところ、「丸は早く描けるからね(笑)」と即答された。そんな理由だったの!?*1 要するに、適当にスペースを埋めておくためのディテールが、あのイボイボや穴っぽこだったのである。そこには、おそらく何の理屈も意味も存在しない。
そういった意味では、成田亨の対局に位置する怪獣デザイナーと言っていいかもしれない。変な話、成田怪獣は簡単に模倣することができる。あくまでもモドキに過ぎないが、ブルトンメトロン星人を思わせる怪獣は、これまでにも無数に生み出されてきた。どうしてそんなデザインに行き着いたのか、きちんと観察すれば成田なりのメソッドが見えてくるからだ。だが、ロードラだのファイヤーモンスだのといった奇妙奇天烈な怪獣の場合はどうだ。そうそう簡単に真似することはできない。だって、指針となる踏襲すべきロジックが存在しないのだ。まあ、鈴木にしてみれば手癖で描いたものかもしれないが、手癖は手癖でも天才の手癖であり、余人をもっては替えがたいということである。


で、巨大ヤプールだ。第2期ウルトラマンシリーズの強豪怪獣……たとえば、ヒッポリト星人とテンペラー星人の生みの親も鈴木だが、いわゆる万人にウケるデザインとは言い難い。実際、平成の世に入ってから復活した際、かなり手を加えられていた。その点、巨大ヤプールは、ほとんどそのままの姿で再登場している。エースキラーもそうだ。
この2体は、比較的わかりやすくカッコいいルックスの持ち主ということなのだと思う。しかしだ。よくよく見ると、こいつらもよく分からん面構えをしてるよなあ。たまたま開米プロがいい仕事をしたというか、この捉えどころのない顔を上手に立体へと起こしているけれど、本当にこういう形を想定しながら描いていたのか疑わしい。たぶん、なんとなくペンを走らせて、なんとなくウレタンを切って貼って、ぬるっと出来上がったのが巨大ヤプールであり、エースキラーなのではないか。それでこんなにクールな怪獣が誕生したのだから、これまさしく異次元の奇跡であろう。