大怪獣まんだら

GIGAN YAMAZAKI & WAGAYA FACTORY's blog

『我が家ファイト』撮影記 Vol.3

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1月26日、土曜日。我々は千葉県国府台の山中にいた。時刻は午前5時を少し回った頃で、まだ空には月が浮かんでいる。映画の撮影は時間との戦いであり、日の出と同時にクランクインしたいくらいの心持ちだった。ファーストカットは『我が家ファイト』ではなく、我が家工房のオープニングロゴ。つまり東映でいうところの“荒磯に波”、MGMでいう“レオ・ザ・ライオン”、バッド・ロボットでいう……しつこいか。怪獣さえ出ていれば、本編パートなんて要らない。それどころかミニチュアセットも要らないというコンセプトで始まった企画ではあるが、後者にまったく未練がないと言ったら嘘になってしまう。そこで知人から家屋のミニチュアを3棟ほど借り受けて、ロゴ映像として撮影することにしたのである。造成地っぽい盛り土に謎の住宅街を作り、三大怪獣をノッシノッシと歩かせる。敢えて書くまでもないだろうが、『行け!ゴッドマン』のオープニングにオマージュを捧げたものだ。あの雰囲気を完全再現するべく、1.25倍のハイスピード撮影を行っている。ちなみに『我が家ファイト』本編では、『ウルトラファイト』に倣ってハイスピードを一切使っていないので、これが今回のロケで唯一のハイスピード撮影となった。


さて、オープニングロゴの撮影が終わったら、いよいよ本編の撮影開始だ。怪獣の着ぐるみは3体あるため、単純計算で4種類の対戦カードを組むことができる。そこで今回は、山編と海編で各4本の合計8本のエピソードを用意した。理想は1日で4本分すべて撮り切ることだが、3本撮れれば御の字だろう。それがスタッフ共通の見解だった。実際、事前に詳細なプランを立てていたこともあって、撮影そのものは順調に進んでいたが、着ぐるみと機材がまあ壊れる、壊れる。着ぐるみに関しては、これまで本格的な格闘を演じたことなどなかったし、そもそも映像用に作られたものではないから仕方がない。とにかく壊れたら、もう二度と同じ箇所は壊れないよう直せばいいのだ。物は考えようで、ウチの怪獣には伸びしろがあるなあと笑っていられたが、機材トラブルには参った。特に痛かったのがカメラのバッテリーで、その気温の低さから残量がみるみる減っていく。*1 山でさえこれなんだから、明日の海はどうなるんだと気が重たくなったが、なんとか2本のエピソードを撮り終えることができた。即席チームでの撮影1日目ということを考慮に入れれば、充分すぎるほどの撮れ高か。撮影後は近場の温泉に繰り出し、満天の星空を眺めつつ、気の合う仲間たちとともに怪獣映画を撮れる幸せを噛み締めるのだった。(つづく)

*1:やや厳密な話をすると、低温によってバッテリーの電圧が下がり、カメラが正確な残量を認識できなくなるということらしい。本当に減りが早くなっているわけではないので、暖かい場所に戻るとバッテリー残量は回復する。そのため、我々はずっと懐の中で予備バッテリーを温めていた。