大怪獣まんだら

GIGAN YAMAZAKI & WAGAYA FACTORY's blog

高く轟くコロナ

世間は新型コロナウイルスと、それに伴う自粛やら給付金やらで上へ下への大騒ぎである。3.11のときもそうだったが、こういった未曾有の危機にこそ元気になるのが、憎っくき正義の味方で……などど、怪獣工房の首魁らしく悪ぶったことを書いてみたりして。や、しかしスーパーヒーローが、フィクションの世界を飛び出して、現実のあれこれに首を突っ込むべきではないとは思う。なんとかするぜと約束してしまえばウソになるし、無敵の力を持っているのに一緒に頑張ろう、見守ってるよなんてのも無責任な話に聞こえる。結局、フィクション出身のヒーローは、フィクションの中でリアルと向き合っていくしかないのだ。『キャプテン・アメリカニューディール』をはじめとするヒーローコミックの幾つかは、きちんと“それ”をやっていた。あのぐらい考え抜いてこそだろう。*1


だから、例の「#ヒーローが子供たちを元気にする」というムーブメントも、あまり感心しない。もっとも発起人の彼に売名の意図はなく、純粋な気持ちからの行動だったように思う。取材で何度か会ったこともあるが、気持ちのいい男だ。そもそも誰かに迷惑をかけてるわけでもなし、大勢で楽しく盛り上がってるところに水を差すほうがどうかしてる。でもスーパーロボット大戦シリーズの戦闘シーンみたいに、前後の文脈から切り離された名台詞付きのツイートが流れてくるとモヤモヤした気持ちになってしまうのだ。しかも正義の味方ならまだしも、シャドームーンやガテゾーンまで乗っかってくることないじゃんか!*2 自分は権利元の人間じゃないし、写真の使用どうこうにまでケチをつける気はないけれど、いくら演じた本人でもキャラクターの持つイメージを歪めるのはダメでしょ。


で、本題。樋口真嗣監督の呼びかけから始まった動画リレー「カプセル怪獣計画」に、我が家工房も自前の着ぐるみとソフビで参加いたしました。えー、さっきまでの話はなんだったのよ。怪獣からしたら、流行り病なんてどうでもいいことなんじゃないのってなところなんだけど、このヒーロー偏重の世の中で、敢えて怪獣を全面に押し出す心意気に応えたいというのが1割。今こそ我が家工房並びに我が家商会の名を売るチャンスというのが9割。そう、ほぼほぼ混じりっけナシの売名行為でございます。悪の怪獣商人たるもの、コロナ騒動を利用してやるくらいの気持ちじゃないとな。わっはっは。それに出演者が怪獣であれば、「コロナに負けないぞ!」的なことも言わなくて済む。みんなで団結みたいな空気は、どうにも苦手だ。ただ、久々にウイップ星人を撮ってみたら、これが実に楽しかった。平和な日々を取り戻したら、また海で山で『我が家ファイト』を撮りたいね。

*1:未就学児童をメインターゲットとする日本のヒーローもので同じようなアプローチは難しかろうが、震災後のヒーロー第1号だからこそ、とにかく明るいキャラクターで視聴者を元気にしようという『仮面ライダーフォーゼ』の企画コンセプトだって、3.11に対する立派なアンサーだったと思う。むしろニチアサでは、このくらいの距離感がベストだ。

*2:カルロス東郷までいくと、もう意味が分からなすぎて面白くなってきたので逆にアリ。