大怪獣まんだら

GIGAN YAMAZAKI & WAGAYA FACTORY's blog

絶対ピンチのにせものヒーロー

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スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』、最高だった。ピーター・パーカーの旅行先、水の都ヴェニスにハイドロマン出現!*1 なんて、まるで夏の昭和ライダーみたいな出だしじゃないか。もちろん、これは21世紀のハリウッド映画だから、スーパーヴィランとの遭遇は偶然なんかではなく、きちんと筋の通った理由も語られるんだけど、次から次へと悪党どもが登場する出し惜しみのない展開が嬉しい。しかも、その黒幕がミステリオ……例の金魚鉢みたいなヘルメットも健在で、「黄色のタイツを履くか?」を追想するに、まったく隔世の感を禁じ得ませんよ。かつてヴィジョンが、あのまんまの姿で出てきたときも感じたことではあるが、思えば遠くへ来たもんだ。“ファー・フロム・ホーム”というタイトルには、そんな意味合いも込められている気がする。『アベンジャーズ/エンドゲーム』からの短い公開スパンも含めて、コミックを読んでいるときの感覚の抽出が、これまでのMCU作品群で最もうまくいってるタイトルなんじゃないかしら。


で、ミステリオの話に戻る。やはり世代的なものもあって、最も思い入れのある悪役を問われたらベノムと答えざるを得ないものの、古参の連中ではミステリオが一番好きだ。クールな装いもさることながら、仕事に行き詰まったSFXアーティストが、自らの持てる特撮技術の粋を集めて、スパイディに代わる新たなスーパーヒーローになろうと目論むというオリジンが最高にイカしてるぜ。ただ、特撮は特撮に過ぎず、それで敵を欺くのは無理があるというか、コミックやアニメでないと成立しないギミックであり、まず実写映画にお呼ばれすることはあるまいと思っていたので、まさかの登板には驚かされたし、その絶妙なアレンジに唸らされもした。今回のミステリオは、メイキング映像さながらのモーキャプスーツに身を包み、この映画も現実も何もかもフェイクであることをピーターと観客に突きつけてくるのだ。まあ、こういうメタ視点がどうこうみたいな利口ぶった話はしたくないんだが、ちゃんとミステリオならではの物語、テーマになっていて感心した次第。


しかしヴァルチャーに続いて、ミステリオまでトニー・スターク絡みの因縁を持たされるとは……。つくづくMCUは、メンター*2 の不始末に決着をつける話が好きだなあと思わされるが、この世界のトニーは、本来ならば他人が仕出かすはずのチョンボまで一身に背負わされ過ぎである。不憫で見てられん。もっともロバート・ダウニー・Jr.由来の茶目っ気と、この超トラブルメーカー体質が付加*3 されたからこそ、アイアンマンはシリーズを牽引するだけの存在になれたに違いない。そして、そんな彼の大いなる力と大いなる責任(という名の尻拭い)を受け継ぎ、ピーターはどんなスパイダーマン*4 になっていくのか? これがフェイズ4で語られるメインストーリーのひとつになるのだろう。そういう意味では、アイアンマンがスパイダーマンに、マーベル・ユニバースの主役の座を返す映画だったともいえるかもしれない。いずれにせよJ・ジョナ・ジェイムソンも復活、おそらくまだ投獄されているであろうマック・ガーガン=スコーピオンとの接触も気になるわけで、今後の展開が楽しみだ。あのミステリオが、最後のひとりとは思えないしね。


SPIDER-MAN 2019 MARVEL LEGENDS 6inch MOLTEN MAN SERIES MYSTERIO / Hasbro

*1:ただ、「エレメンタルズ」ということは、あいつはハイドロン≠ハイドロマンだったのか? 見てくれは、それぞれサンドマン、ハイドロマン、モルテンマンを模しているように感じられたけど、スパイダーマン映画ということで、より馴染み深い彼らの姿に寄せて造形されただけかもしれん。結局、ゼファーにあたる虚像は画面に登場しなかったが、ワールウィンドっぽい姿だったのかなあ。ワールウィンド、スパイディと縁がある印象は薄いけどね。それともサイクロンかな?

*2:マーベルでメンターというと、サノスのお父ちゃんが思い浮かぶわけですが、この場合は指導者、先人みたいな意味で使っております。

*3:個人的な印象に過ぎないが、コミックにおけるトニー・スタークは、MCUのトニーのような愛すべきボンクラではなく、むしろ自分にも他人にも厳しく、世界平和という理想のためなら自ら泥を被ることも厭わない人物として描かれているように思う。

*4:一見するとスーペリア・スパイダーマンっぽい印象の新スーツだが、歴代スーツの装備や意匠がそこかしこに散りばめられており、トム・ホランドスパイダーマンの未来に無限の可能性があることを示唆している……ように感じられました。