大怪獣まんだら

GIGAN YAMAZAKI & WAGAYA FACTORY's blog

レッド・アンド・ブルー

ここ数年、ずっと気になっていることがある。レッド族とシルバー族について、多くのファンが誤った認識を持っている件だ。さらにブルー族まで話を広げると、円谷プロですら勘違いしている節がある。まあ、後者に関していえば、その発端に誤解があろうがなかろうが、現行設定こそが公式であり、こっちのほうが正しいんじゃい! みたいな話をしたいワケではない。ただ、いにしえの大伴昌司イズム、あるいは学年誌主導で紡がれた諸設定を愛する人間のひとりとして、過去の資料から得た情報をまとめておくべきではないかと思っただけだ。もちろん、自分とてウルトラのすべてを網羅しているはずはないので、さらに追加すべき情報や間違いなどがあれば、コメント欄から指摘していただきたい。


最初に書いておきたいのは、セブン型のウルトラ戦士をレッド族、マン型をシルバー族と呼んでいませんかということ。まあ、あながち間違いでもない。かたおか徹治の名作『ウルトラ兄弟物語』にてセブンとともに討ち死にしたレッド族の猛者たちは、いずれもセブン型……要するに六角形の目をしており、『ウルトラ一族の大反乱』に登場するレッド族の戦士ジュピターもまたセブン型だった。当時の作り手の共通認識として、セブン型≒レッド族というものはあったのだろう。しかし、実際にレッド族と明記されているウルトラ兄弟は、セブンただひとりなのだ。少なくとも自分の知る限りでは、タロウやレオもレッド族であると書かれた記事は存在しない。マン型のレッド族もいるのではないか?*1


そもそもレッド族とシルバー族の初出は――例によって自分の知る限りでは――『ぼくら』昭和43年10月号の特集記事「さようならウルトラセブン」である。ざっくりまとめると、光の国にはレッドマン系とホワイト系というふたつの人種がおり、勇士階級のレッド族、知識階級のシルバー族、事務や計算が得意なホワイト族、力仕事が得意なブルー族という4つの国家を作っている。ホワイト族は白い身体、ブルー族は青い身体を持ち、セブンはレッドマン系のレッド族で、ウルトラマンはシルバー族。まあ、こんな感じだ。おそらくウルトラマンゾフィーがホワイト系なのだと思われるが、そのことについては触れられていない。ちなみにブルー族とホワイト族は、セブンと同じ顔で描かれていた。


で、この大伴昌司由来の設定は、第二次怪獣ブームにおける学年誌主導のそれにも受け継がれるが、よりシンプルなものになっていった。まずレッドマン系、ホワイト系という大きな括りがオミットされ、種族ごとに異なる国に住んでいる設定もなくなった。ただし、強くて勇気があるレッド族、頭のいいシルバー族、計算が得意なホワイト族、力持ちのブルー族という部分は変わらず、新マンもシルバー族であると説明されている。さらにレッド族は、光の国の武士の仲間とも書かれていて、人種的な区分というよりも士農工商のような階級制度に近いニュアンスで考えられていたようだ。また、記事の挿絵ではマン型のブルー族が描かれており、種族ごとの体色の違いについての記述も曖昧になってくる。


そして体色について、この時期に新たなる設定が登場する。ウルトラ族の一般市民や宇宙警備隊の訓練生は、銀の身体に青いライン、あるいは緑のラインなどが走っており、正式な宇宙警備隊員になると身体の色を赤に変えるのだという。赤は、宇宙警備隊のユニフォームなのだ。元々、ウルトラ族は身体にぴったりした服を着ているという古い設定があるのだが、それを推し進めた格好といえよう。今風に解釈するならば、タイプチェンジだろうか。レッド族、シルバー族と比較するとマイナーな設定だったが、*2ウルトラマンメビウス』第8話「旋律の捕食者」にて、ミライの「君の青い身体……宇宙警備隊員でない君が、何故この星で戦っているんだ!」というセリフとともに突如復活を遂げる。


ヒカリは宇宙警備隊ではなく、宇宙科学技術局で働いていたから青い身体のままだったのだ。現在も閲覧できる公式サイト内のWEBメビナビでも、その旨が書かれている。だが、当時の『フィギュア王』だったと思うが、ヒカリだかツルギだかに「見ての通りブルー族だ」というようなキャプションが添えられていたのである。これが公式の資料に基づく記述だったのか、担当ライターの思い込みで書かれたものだったのか、今となっては分からない。自分自身、まだぺーぺーの学生ライターだったので、ウルトラ関係の原稿を書いたことがなく、プレスリリースなどに目を通せる立場でもなかったのよね。まあ、別にヒカリがブルー族であっても問題はない。力持ちの科学者なんて、世の中には大勢いる。


そんなこんなでレッド族、シルバー族、ブルー族、そして宇宙警備隊は赤い身体という裏設定は、今や映像作品にも反映される堂々たるオモテ設定となった。もっともレッド族とシルバー族は戦闘が得意で、ブルー族は頭脳明晰と一部設定が改められたりはしている。*3 先述したように意外と歴史ある設定なので、ここは弄って欲しくなかったというのが正直なところだけど、ブルー族とホワイト族が、それぞれブルーカラーとホワイトカラーからの安直な発想だったことを考えると、時代に合わせた変化ともいえるかもしれない。まあ、児童誌発信の設定は、このイージーな感じがいいんだけどね。光の国では8千歳になるとウルトラ学校に入学するとかさ。なお、この設定がまだ生きてる場合、ゼロもタイガもゼットも未就学児童ということになります。地球なんか来てる場合じゃねーだろ!


プレイヒーローVSウルトラマン対決セット激闘の覇者編 赤色火焔怪獣バニラ / BANDAI

プレイヒーローVSウルトラマン対決セット ゼロ、新たな力編 青色発泡怪獣アボラス / BANDAI

*1:チャイヨープロのウルトラマンエリートは、ムエタイ風の宇宙拳法を得意とするレッド族の戦士と設定されていた。まさにマン型のレッド族だ。まあ、現在ではいなかったことにされてる人ですが……。

*2:平成11年に発行されたムック『帰ってきた帰ってきたウルトラマン』内の円谷一夫社長(当時)インタビューでは、「誰に聞いても『そんなのあったっけ』って言われちゃうんです。私が言うのも変ですが、よかったら、それ調べてみてくださいよ。絶対にいるはずですから、緑色のウルトラマン!」「わかりました(笑)」と、完全に与太話扱いされていた。

*3:ひょっとすると、青い身体のヒカリはブルー族→ブルー族はヒカリのように頭が切れる連中揃い→トレギアもブルー族! みたいな勘違いから始まった連想ゲームで、徐々に徐々に変わっていったのかもしれない。しかしヒカリ、本当に『メビウス』当時からブルー族設定だったのかなあ。そこら辺、いまいちよく分からないままなのだった。