大怪獣まんだら

GIGAN YAMAZAKI & WAGAYA FACTORY's blog

ディオニス製作記(その1)


なんで君らは怪獣しか作らないの? ヒーローも作ればいいのに。我が家工房を始めてから幾度となく投げかけられてきた言葉だ。まあ、これは順序が逆というか、「みんながヒーローに走るので、私、怪獣を独占させてもらいます」というだけの話なんだけど、頑固そうに見えて意外と柔軟な我々は、実は早々にオリジナルヒーローの製作に取り掛かっていたのだった。それが 怪獣ハンター ディオニス である。


去年の6月には、もう名前も決まっていたはずだ。デザインの取っ掛かりとして、“『ザ・ウルトラマン』のメロスに不良息子がいたら?”というコンセプトを打ち出していたので、『走れメロス』に登場する暴君ディオニスから採らせてもらった。メインカラーは、床山皇帝(@Kaisel_Kaiser)が大好きな緑。映像作品で使用するスーツじゃない≒グリーンバックを気にしなくてもいいからだ。ここまでイメージが固まっていれば、そんなに悩むことはない。実際、デザイン画の初稿は、するりと上がってきた。ところが……。

全怪獣・宇宙人大図鑑 Vol.3

f:id:gigan_yamazaki:20190329034001j:plain
悪辣宇宙人 ジョルジュ星雲人
■身長…1.9〜47メートル ■体重…90キロ〜1万9000トン
 本星にいるジョルジュ上司からの命令で、子供ばかりを襲っては斬り殺していた。
 右腕の巨大なハサミと左腕の鋭いツメを武器としており、腰のカマもブーメランのように飛ばすことができる。夜行性で、夜になると街に姿を現す。
 ディオニスに幼児連続殺人の濡れ衣を着せようとしていたが、最後は正体が発覚して巨大な姿となって暴れまわった。
 出身地/ジョルジュ星雲 出現地/中野区→杉並区 最後/ミリオンクラッシュ。

2月のお仕事

ガイガン山崎+齋藤貴義 怪獣プロジェクト - 怪獣チャンネル

今日から君も、怪獣のプロだ――。
夕方の6時過ぎ、いつも12チャンを点けると、ザラブ星人に似た声のオジさんがそう語りかけてきた。
当時、僕はまだ4歳である。素直な子供である。だから確信した、俺は怪獣のプロなのだ。生ける怪獣コンピューターなのだ。
あれから二十余年、僕は怪獣のことを書いたり喋ったりして暮らしている。まさしく怪獣のプロだ。
君も『怪獣チャンネル』を聴いて、怪獣のプロになろう!


#001「ゴジラ(ゴジラシリーズ)」f:id:gigan_yamazaki:20190130013052j:plain
#038「モチロン(ウルトラマンタロウ)」f:id:gigan_yamazaki:20190130013052j:plain
#071「タイラント(ウルトラマンタロウ)」f:id:gigan_yamazaki:20190130013052j:plain
#085「赤影(仮面の忍者 赤影)」
#086「ミラクル星人(ウルトラマンタロウ)」f:id:gigan_yamazaki:20190130013052j:plain

メディア芸術カレントコンテンツ
世界に息づく怪獣王(ゴジラ)の遺伝子 第1回「What is KAIJU?」
世界に息づく怪獣王(ゴジラ)の遺伝子 第2回「海を渡った怪獣たち」

ニュータイプ 2019年3月号

ニュータイプ 2019年3月号

マーベル・シネマティック・ユニバース

マーベル・シネマティック・ユニバース

パロディとオマージュの間に…

f:id:gigan_yamazaki:20190330230742j:plain
『我が家ファイト』の重要なコンセプトのひとつに、“オマージュであってパロディではない”というものがある。本家である円谷プロも含めて、様々なクリエイターがパロディの対象にしてきた『ウルトラファイト』。しかし、どれもこれも最初の『ウルトラファイト』のようには笑えない。これはたぶん、最初から笑かしに掛かってるからなんじゃないか? 『ウルトラファイト』の可笑しさって、もちろん狙っている部分もあるにはあるが、大部分は天然だろう。山田二郎の実況ナレーションにしても、どこかとぼけた雰囲気が笑いに繋がっているのであって、御本人に笑わせる気はあるまい。作り手のドヤ顔が透けて見えたら、それだけで受け手は冷めてしまう。やっぱり古舘伊知郎ではダメなのだ。


要するに茶化さないということなんだが、エッセンスの抽出の仕方にもこだわった。たとえば、極端に擬人化された怪獣が、コントさながらのやり取りをするエピソードは最小限に留め、本当にただひたすら戦っているだけのエピソードをメインに据えている。野っ原で、海岸で、着ぐるみの怪獣がホテホテと歩く。走る。戦う。これで充分、シチュエーションとしては狂っているのだから。また、『ウルトラファイト』の特定エピソードをモチーフにすることも避けた。「海は青かった」や「怪獣島異聞」、「激闘! 三里の浜」の現代版なんてのはナシだ。だがライフルや木刀あっての『ファイト』ではあるので、ジョルジュ星雲人も武器を握れる腕に換装できるようにしたし、M-16自動小銃も銀色にリペイントして登場させてみた。まあ、ここまでやってしまうとパロディの領域に入ってしまうかもしれないが、でもどうしてもやりたかったんだもん。銃で撃たれて死ぬ怪獣!

ジョルジュ星雲人製作記(その9)

f:id:gigan_yamazaki:20190329005819j:plain
『我が家ファイト』の準備に入ってしまい、いつしか製作記が尻切れトンボになっていたけれど、クランクインに向けてジョルジュ星雲人の手直しそのものは続けていたのです。ただし前回の段階で、ほぼほぼ完成に近い状態になっていたこともあって、当時の床山皇帝(@Kaisel_Kaiser)の興味は、例のゴジラのほうに向いていた。そうなるともう、この男を動かすのは難しい。どうしても気になる箇所があるならば、自分でどうにかするしかなかった。まあ、幸いにして床山皇帝は、自分の中での完成まで持っていければ、あとは煮るなり焼くなり好きにしてという人間なので、もう勝手にやっちゃえということに。


しかし、年の暮れも押し迫った頃に『我が家ファイト』の企画が立ち上がり、千葉までロケハンに行ったことで、床山皇帝のやる気ゲージが回復。結局、彼のほうで下半身のパーツを作ってくれた。やっぱり山林で転げ回るには、タイツ剥き出しは危なすぎる。最後は“センセイ”ことぱしみ(@nicesharp)くんに来てもらい、恒例の仕上げ塗装をお願いした。当初、あまりのアトラクっぽさに不安を覚えていたジョルジュ星雲人も、随分と立派になったもんだ。ちなみにセンセイは、いまいち仕上がりに満足できなかったらしく、年明けにも一度来てくれている。なんて真摯な男なんだ! 最近はご無沙汰だけど、また遊びに来てくれ。ジョルジュ星雲人の下半身と新怪獣が、センセイの塗装を待っている!!

THE LETHAL WEAPONSがやってきた!

f:id:gigan_yamazaki:20190408180056j:plain
三者三様、十人十色、各人各様……基本的に似たような趣味嗜好の人間とばかり行動するタイプだが、それでも仲良しグループが丸ごとハマる新たなコンテンツなんて、なかなか出会えるもんじゃない。みんながみんな同じぐらいの熱量で夢中になれた作品となると、ここ数年では『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』や『ビッグバン☆セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』、『ヒックとドラゴン』くらいじゃなかろうか。そこに彗星のごとく現れた存在が、THE LETHAL WEAPONSである。我が家工房初*1 のブームが、洋画でも海外ドラマでもなく、まさかバンドだったとは! なんせ音楽といえば、『戦え!ミラーマン』と『強殖装甲ガイバー』くらいしか聴かない床山皇帝(@Kaisel_Kaiser)まで夢中になって聴きまくってるのだから、これはかなりの異常事態といっていいだろう。


『我が家ファイト』にも通ずる話だけど、元ネタありきでおもしろカッコいいラインを狙う場合、どこまで対象を茶化すか、マニアックに踏み込むかが肝になってきて、ここを誤ると面白くもカッコよくもなくなってしまう。その点、彼らの『80年代アクションスター』は完璧だった。基本的にイジるのはスターの私生活であり、映画の内容には深く触れない。それでいて『ナイトホークス』や『デッドフォール』、『ロックアップ』のタイトルを挙げてくるセンスが信用できるじゃないですか。さらにMVの完成度も高く、特にグラサンをかけた外人とアメフトのヘルメット男という演者ふたりのルックスが抜群にいいのだ。そのポーカーフェイスによって、コミックソング(?)特有の嫌味っぽさが打ち消され、素直な気持ちで笑える。これはかなり考え抜かれているぞと感心した次第。


数年前、ネット上で話題になった怪PV『都立家政のブックマート』も、ほぼ同じ座組みで作られていたが、このときはまだ作り手の“面白いことをやってる俺ら”みたいなドヤ感が少し透けていたように思う。でもまあ、実際に面白いんだから仕方ない。これを隠し通せるようになったら、もはやプロの芸人だ。そこで思い切って素顔を覆ってみた……のかどうかは分からんちん。勝手な深読みだ。ただ、ブックマート都立家政店の常連客ならば、ふたりとも中野区民の可能性が高く、つまりご近所さんではないか。中野に広げよう、友達の輪! ということで、Twitter上にて「新作に、怪獣が必要なときは呼んで下さい!」とラブコールを送ってみたところ、ホントにアイキドウ(@aikikiyohisa)さんが我が家工房まで来てくれた! 近い将来、ポンズ*2 のMVにウチの怪獣が登場したり、逆にウチが劇伴をお願いしたりなんちゅうコラボもあるかもしれません。乞うご期待!


【2019年4月9日追記】
あれから2ヶ月近くが経ち、アイキドウさんはアイキッドさんになり、ポンズの曲数は2曲から13曲にまで膨れ上がり、なんと1stアルバムまで発売! しかも一時期、Amazonのデジタルミュージック部門で一番人気になっていたというのだからすごい話。ウチも頑張らなくっちゃ、頑張らなくっちゃ! とマザロン人ばりに奮起する今日この頃であった。

*1:厳密な話をすると『任侠沈没』があるんだけど、10年以上前のマンガだから“新たなコンテンツ”ではなかろう。しかしコンテンツってのは、なんともイヤな言い方だね。

*2:THE LETHAL WEAPONSの正式略称……らしい。ちなみに我々は、なんとな~く「リーポンズ」と呼んでいた。

『我が家ファイト』撮影記 Vol.4

f:id:gigan_yamazaki:20190401064139j:plain
1月27日、日曜日。この日も朝5時過ぎにメラーノ(@samuhara)邸を出発した我々は、浜辺に三脚を立てて日の出を待っていた。バラモンキングが夕日に向かって佇む、『我が家ファイト』のラストシーンを撮るのだ。まあ、本来なら日の入りを狙って撮るべきくだりなんだが、西から昇ったお日様が東へ沈むのは『天才バカボン』の主題歌くらいであって、大原の海水浴場すなわち太平洋で撮れるものではない。要するに、朝焼けを夕焼けに見立ててしまおうということ。偉そうにディレクターズチェアなんてものに腰掛け、外部モニターを覗き込む自分の隣では、助監督の清洲昇吾(@KossetsuJiru)くんも、自前のカメラを構えていた。『我が家ファイト』のついでに、汎用性の高い映像素材も残しておこうという腹積もりである。こういうタダで使える素材は、あればあるほどいい。


その後、謎の“いい画撮るマン”と化した清洲くんは、水平線や波しぶきを収めるために何処かへと去っていってしまったけれど、助監督不在でもなお撮影は快調そのものだった。海は風が強く、その風には塩分が含まれているため、機材や着ぐるみへのダメージも大きい。そこで4本分のアイデアを2本のエピソードに統合することで、海辺での滞在時間の短縮を図ったんだが、そうなると当然、現場でのアドリブ的演出が増えてくる。しかし撮影2日目ということもあって、誰もが最小限の指示でキビキビと動いてくれ、こちらは考えることに専念できた。また、キャストが自らアイデアを提案してくれることもあり、こんなにちゃんとした現場を構築できたのは生まれて初めてかもしれない。結果、昼までに2本分きっちり撮り終えることができた我々は、再び国府台の山中へと向かうのだった。


最後の撮影は、豊富な技を持つジョルジュ星雲人と力自慢のウイップ星人のタイマンバトル。ひたすら戦い続けるのみのシンプルな筋書きだが、だからこそ撮っておきたかったエピソードでもある。しかも2日間の撮影を通して、それぞれの怪獣に個性とでも呼ぶべきものが備わりつつあり、決して無味乾燥なアクションのみには終わらないという確信めいた想いがあった。『ファイト』が撮れる自信があった。ひたすら暴れまくる狂犬のようなバラモンキング、とにかく力で押しまくる脳筋のウイップ星人、試合巧者に見えて咄嗟の事態には対応できないジョルジュ星雲人……といった具合で、特にジョルジュ星雲人のキャラクターは、おそらく床山皇帝(@Kaisel_Kaiser)が演じ続けていただけでは生まれてこなかったものだろう。この嬉しい誤算のお蔭で、『我が家ファイト』は笑顔のうちにクランクアップ。秋になって怪獣が増えたら、またこの地に赴くつもりだ。(おわり)