大怪獣まんだら

GIGAN YAMAZAKI & WAGAYA FACTORY's blog

ほぼ一日一怪獣(サマエル)


横井軍平が言うところの「枯れた技術の水平思考」ではないけれど、大作映画のメイキングを観たり読んだりしていると、VFX全盛期の現代においてもSpFX時代に培われた創意工夫は活きており、またアニマトロニクスやミニチュアといったアナログな技術そのものも、きちんとデジタルと共存しながら更なる進歩を遂げてきていることが分かる。おそらく完全に廃れたアナログ特撮なんて、オプチカル合成くらいじゃなかろうか。


まあ、昔ながらのやり方にこだわるファンへの目配せなのか、最近は手段と目的が入れ替わってしまったような特撮カットも少なくない。急にキャラクターの動きがぎこちなくなったり、カメラアングルに制限がかかったりするくらいだったら、素直にフルCGでよかったんじゃないのという気持ちになることもある。もちろん、最初からCGIに置き換えることを前提に、そのレファレンスとして現場でブツを使うのは全然構わないんだけど。


そういう意味では、『ヘルボーイ』に登場するサマエルが白眉だった。2004年制作の映画だから、シチュエーションによって着ぐるみとCGIを巧みに使い分けながら表現されており、常にウネウネと蠢く触手のような髪の毛が印象的な怪獣だ。まさにデジタルとアナログの素晴らしい融合……と思いきや、着ぐるみベースで撮影されたカットの髪の毛は、なんと後付けCGではなく、サーボモータを内蔵したアニマトロニクス! これは分からなかった。特殊メイクアーティスト出身のギレルモ・デル・トロは、こういった造形物の持ち味を活かした運用がとにかくウマい。ただの怪獣好きの太ったおじさんではないのだ。


Hellboy Sammael Action Figure / Mezco Toyz