去年、KAIJUとGIANT MONSTERの境界線が曖昧だった時代について書いたけれど、自分の幼少期……すなわち80年代後半から90年代にかけて、日本の怪獣にもクリーチャー的表現が導入されるようになった。もちろん、向こうの人間からすれば、そんな些細な生物学的なリアリズムが付加されようと、依然としてKAIJUはKAIJUなんだろう。ただ、そういった外来種との交配によって、純粋な在来種=怪獣は絶滅寸前といっていい。
まあ、自然界のように交雑が進化を促すことも起こりうるので、それはそれでいいんだけど、人間には枯れ滅びゆくものに対する情というものがあり、だからこそ自分は70年代のテレビ怪獣に愛を注ぐのである。で、その代表格といえる怪獣が、『ウルトラマンタロウ』に登場するジレンマだ。ヌルヌルグチャグチャしたイメージが付きまとうナメクジの怪獣でありながら、この乾きっぷりはどうですか。世界よ、これが日本の怪獣だ!!
例の曖昧だった時代に生み出されたナメゴンは、霧吹きを使って表面を湿らせていたし、ゼロ年代に入ってから作られたペドレオンもCGIの併用や塗装表現によって、この手の生物が有する不快感を表現していた。CREATUREなる単語には「気持ちの悪い生き物」「毒を持ち、触れると危ない生き物」といったニュアンスが含まれていると聞いたことがあるが、まさにそのイメージだ。嫌悪感を超越した、ある種の美しさを追求していると言い換えられるかもしれない。しかし、ジレンマは違う。むしろボロ雑巾みたいでバッチイ雰囲気すら漂っているが、いい意味で捻りのないカッコよさを併せ持っており、私的No.1ナメクジ怪獣の座は揺るがない。目が6つも付いてるところもいいよな!
なめくじ怪獣ジレンマ(ガレージキット) / 中華料理屋 恩珍軒